山手線は止まり風鈴を買う

お金を入れたり出したりしなければならない用事があり、神田と有楽町。快速があるから山手線には背を向け、京浜東北線を待っていた。山手線が先に入ってきた。やけに大きなクラクションを立てながら。


黄色い線の外側(あのアナウンスを聞くたびに、こっちが外側で、あっちが内側って気がしてならない。)を携帯でもしながら、フラフラしているヤツがいるんだな。iPodで音楽を聞いていたものだから、そのクラクション以外の音は耳に入ってこなかった。
しばらくして視界のフチがざわざわしている。後ろを振り向くと山手線が停車している。向こうはもう第二弾到着?はやっ!とか小ちゃい声で言ってみても、どうも様子がおかしい。動いていない。止まっている。扉も閉まったまま。恐らく開いてもいない。iPodの音楽で音が聞こえないんじゃない。そもそも音が鳴ってない。スタンド、ザ・ワールド。時間が止まっている。多分、これはさっきの大きなクラクションの電車だ。あれからずっと停まったままなんだ。

ざわざわしているあたり、電車中程の車両の連結あたりから下を覗いてる人がいる。同じように覗いてみた。電車の下になにかある。キチンと覗いてみた。人間だ。

目の前の現実が、うまく頭に入っていかない。脳の中にそれをしまう引き出しがないからだ、きっと。そうして風鈴を買った。

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